<フロン類算定漏えい量>報告業務、事務作業の流れ
「フロン排出抑制法」第十九条の規定により、管理者は主務省令で定める方法によりフロン類の排出量を算定し、年度内における排出量の合計が1,000t-CO2以上である場合には事業を所轄する大臣に報告しなければなりません。従って、年度末には法人としてのフロン類排出量の合計値を把握し、まず同値によって国への報告が必要であるか否かを判定する必要があります。この判定は毎年度行う必要があり、昨年度は報告対象となっていても翌年度が1,000t-CO2未満であれば、翌年度は報告不要であり、その逆もあり得ます。
フロン類の排出量は、充塡回収業者から書面にて交付された充塡・回収証明書に記載された充塡・回収量と、告示にて示された温暖化係数により以下のように算定します。
算定漏えい量の報告は管理者の事業の主管大臣宛に提出します。
例えば、物販店舗や生産工場を事業として運営する管理者であれば経済産業大臣宛ですし、医療関係の事業なら厚生労働大臣宛、
運輸・交通事業や建築、土木関係なら国土交通大臣宛、学校等の教育関係なら文部科学大臣宛という具合で、
複数の省庁にまたがった事業を展開されておられる管理者の場合は全ての所管大臣宛に同じ内容の報告書の提出が必要です。
提出された報告は環境省、経済産業省に集約され、公表されます。
その際、たまたま事情があって本年度は漏えい量が増加してしまったとか、次年度は対策を行う予定なので
漏えい量は減少する見込みであるといった見解を添えたい管理者は、報告書に添付すればその内容も併せて公表されます。
また報告内容は都道府県知事にも通知されます。
次にフロン類算定漏えい量の報告について様式などを含めて分かり易く、詳しくお伝えします。
(1)フロン類算定漏えい量報告における報告事項について
管理者が事業所管大臣へ報告する際には、国指定の様式に則り以下の事項を報告することが求められています。
1)管理者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名
2)管理者において行われる事業
3)管理者の主たる事業所の所在地(本社の所在地)
4)全国合計及び都道府県ごとの算定漏えい量及びフロンの冷媒番号区分ごとの内訳
5)一つの事業所における算定漏えい量が1,000トン(t-CO2)を超えるものについては、当該事業所ごとに事業、所在地、算定漏えい量及びフロンの冷媒番号区分ごとの内訳
また報告書の提出期限も定められています。年度終了後の7月末日までに前年度の報告を行う必要があります。
算定漏えい量の報告に関しては、報告された情報について集計のうえ国から都道府県にも通知の上、公表されることになっています。
漏えい量の報告を怠った場合や、虚偽の報告をした場合には過料に処せられますので、ご注意いただく必要があります。
(2)フロンの漏えい量報告に関連する情報の提供について
管理者として1,000トン(t-CO2)以上の漏えいがあり漏えい量の報告が必要な場合、報告書を提出する事業を所管する大臣に対して、漏えい量の増減状況や漏えい量の削減に関し実施した措置などを関連する情報として報告に添えて提出できます。
これらの情報もフロン類算定漏えい量報告と共に公表されます。
提供事項 | 記載できる内容 |
---|---|
算定漏えい量の増減の状況に関する情報 |
・増減の状況 ・増減の理由 ・増減の状況に関する評価 |
算定漏えい量の第一種特定製品の種類ごとの内訳等に関する情報 |
・第一種特定製品の種類ごとの内訳、製品の台数、年間漏えい率及びその算定方法 |
算定漏えい量の削減に関し実施した措置に関する情報 |
・第一種特定製品の管理の適正化に係る取組 ・フロン類代替物質を使用した製品または使用フロン類の環境影響度が低い製品の導入状況等 ・漏えい量削減効果の見込みと併せて記入可 |
算定漏えい量の削減に関し実施を予定している措置に関する情報 |
・第一種特定製品の管理の適正化に係る計画 ・フロン類代替物質を使用した製品または使用フロン類の環境影響度が低い製品の導入に関する計画等 ・漏えい量削減効果の見込みと併せて記入可 |
その他 |
・上欄に記入していない漏えい量抑制等に関する情報 |
(3)算定漏えい量報告の報告様式について
算定漏えい量の報告については、省令(「算定漏えい量の報告等に関する命令」)において様式が定められています。
具体例として紹介する以下の記入例は、「フロン類算定漏えい量報告マニュアル Ver.1.0」(平成27年3月、環境省・経済産業省)に記載されているものです。
【算定漏えい量の報告書 様式第1(表面)の記入例】
【様式第1(裏面)の記入例】
【様式第1 第1表の記入例】
フロンの種類ごとに算定漏えい量と実漏えい量を全体と都道府県別に記載しなくてはいけません。
【様式第2の記入例】
様式2は漏えい量の削減の打ち手などを記載するものです。
提出は事業者の任意となっています。
必要に応じて様式第1に添えて提出します。
(参考)報告書作成支援ツールとフロン法電子報告システム
フロン類の算定漏えい量報告の作成に当たっては、環境省・経済産業省の「フロン排出抑制法ポータルサイト」から「報告書作成支援ツール」をダウンロードし、それに入力するかたちで利用することや、さらには「フロン法電子報告システム」を利用して電子的な方法で報告す ることもできます。詳しくは環境省・経済産業省のホームページにてご確認ください。
[概念図]
いずれにせよ報告書の作成に当たっては、都道府県別に実漏えい量/算定漏えい量を冷媒番号区分ごとに記載した様式第1の第1表の作成と、そのためのデータ入力の作業がかなりの負担になると考えられます。
RaMS(冷媒管理システム)の活用
そんな時こそ、RaMS(冷媒管理システム)を利用いただくと、報告書作成ボタンをクリックいただくだけで第1表の作成が完了しますので、様式第1を記入するだけで国への報告書の作成を効率よく済ませることができます。
【様式第1 第1表】(RaMSでの出力事例)
また報告書作成支援ツールを利用される場合にも、ツールに対応したCSVでの出力ができますので、CSVファイルをツールにインポートするだけで個々のデータを入力する必要がなくなります。
参考事項
今回も経済産業省・環境省から公表されているフロン排出抑制法Q&A集(第3版)(平成28年7月20日)から関連するものをいくつかご紹介します。
質問:年間の漏えい報告は事業所単位なのか。
回答 :法人単位での報告となります。ただし、1事業所において1,000トン-CO2以上の漏えいが生じた場合は、当該事業所に関する漏えい量について法人単位のものと併せて報告を行う必要があります。
質問:算定漏えい量報告は子会社等を含めたグループ全体で報告してもよいか。
回答:報告は法人単位で行うこととしており、資本関係の有無によることではないため、子会社等のグループ関係があったとしても法人別に報告する必要があります。
なお、一定の要件を満たすフランチャイズチェーン(連鎖化事業者)は、加盟している全事業所における事業活動をフランチャイズチェーンの事業活動とみなして報告を行うこととなります。
質問:算定漏えい量に関して、チェーン店の場合は合算されるのか。
回答:地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の場合と同様に、一定の要件を満たすフランチャイズチェーン(連鎖化事業者)は、加盟している全事業所 における事業活動をフランチャイズチェーンの事業活動とみなして報告を行うこととなります。
質問:算定漏えい量報告の具体的な報告窓口や報告方法は決まっているか。
回答:算定漏えい量報告は事業所管大臣に報告することとしており、各省庁が窓口となります。具体的な報告窓口や報告方法は、算定漏えい量報告のマニュアルをご確認ください。
質問:都道府県知事が漏えい者として報告する場合、報告先の事業所管大臣はどこになるのか。
回答:都道府県(知事部局)が管理者となる場合は、環境大臣・経済産業大臣の双方に報告してください。(算定漏えい量マニュアル Ⅲ-33)。
質問:算定漏えい量報告は、毎年度算定し、報告する必要があるのか。
回答:報告対象(年度内の算定漏えい量が1,000トン-CO2以上)かどうかを判定する必要があるため、毎年度、算定漏えい量を算定していただく必要があります。
また、その報告は、前年度における算定漏えい量が1,000トン以上の場合に報告を行う必要があります。
質問:車などの移動体の冷媒の充塡・回収は、当該移動体を管理している場所とは異なる場所で行う場合もあるが、その際、どの事業所分・都道府県分として報告するのか。
回答:移動体を管理している事業所及びその事業所の属する都道府県における漏えいとみなすものとします。
質問:工場を空調機器ごと譲渡する場合、過去の整備時における算定漏えい量(譲渡前の漏えい量)は、誰がいつ報告するのか。譲渡先に、その年度分を全て報告してもらって良いか。
回答 :法令上は管理者の義務として年度毎の管理第一種特定製品の算定漏えい量を報告することになっています。(1,000トン-CO2以上の漏えいの場合)従って譲渡前漏えい分と譲渡後漏えい分をそれぞれの管理者が報告する必要があります。