第1回 JRECOフロン格付け
「フロン排出抑制法」遵守状況−第1回格付け調査
東証一部上場1350社の環境関連レポート調査(2021年度)
「フロン排出抑制法(以下:法)」の遵守を経産省・環境省とともに啓発・推進しているJRECOでは、大企業における法の理解度と意識度調査を行いました。企業がWebで公開している統合報告書などは、ステークホルダーに対して企業経営の健全さを知ってもらうものです。したがって、報告書に記載されている項目は、その企業が重要項目と捉えていることです。本格付け調査は、その報告書にある環境関連レポート部分に注目して、法遵守活動が記載されているか、そして法遵守がどの程度レポートに反映されているかを調査しました。その調査結果として、Aランク企業16社、Bランク企業37社を下記に発表いたします。
rank A
Aランク企業(16社)算定漏えい量、定期・簡易点検状況など適切に記載
- イオン株式会社
- エーザイ株式会社
- 株式会社カネカ
- セントラル硝子株式会社
- 大正製薬ホールディングス株式会社
- 田辺三菱製薬株式会社
- DIC株式会社
- デンカ株式会社
- 東亞合成株式会社
- 東京応化工業株式会社
- 南海電気鉄道株式会社
- 日本通運株式会社
- 株式会社ファミリーマート
- 三菱倉庫株式会社
- 株式会社ヤクルト本社
- ワタミ株式会社
rank B
Bランク企業(37社)法遵守の記載内容に一部不足がある
- 株式会社朝日工業社
- 株式会社ADEKA
- いすゞ自動車株式会社
- ANAホールディングス株式会社
- 株式会社エクセディ
- 株式会社 上組
- 九州電力株式会社
- 協和発酵キリン株式会社
- 株式会社極洋
- 株式会社クボタ
- 山陽特殊製鋼株式会社
- JCRファーマ株式会社
- シスメックス株式会社
- 新電元工業株式会社
- 株式会社住友倉庫
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
- 大同特殊鋼株式会社
- 宝ホールディングス株式会社
- 中国塗料株式会社
- 東京瓦斯株式会社
- 東京急行電鉄株式会社
- 東電HD株式会社
- 東邦ガス株式会社
- 東洋インキSCホールディングス株式会社
- 東洋紡株式会社
- 凸版印刷株式会社
- 西日本鉄道株式会社
- 株式会社日清製粉グループ本社
- 日本シイエムケイ株式会社
- 株式会社日本触媒
- 日本曹達株式会社
- 日立マクセル株式会社
- 富士通株式会社
- 三井製糖株式会社
- 森永乳業株式会社
- ユニ・チャーム株式会社
- ユニプレス株式会社
※東証一部上場企業のうち、1350社の環境関連報告書に「フロン排出抑制法」遵守状況の有無及び内容を調査しました。
※上記16社は法の規定(簡易点検・定期点検、算定漏洩量など)が適切に報告されているとして評価しました。
※この評価はレポート全体ではなく、 あくまでも「フロン排出抑制法」遵守状況報告に特化した調査です。
考察
1)「フロン排出抑制法」遵守状況の詳細報告があることは経営者がフロン問題への理解が深いことを示しています。
2)Aランク16社は、経営者がフロン問題とその重要性を理解しており、同時に社内ではフロン対策が徹底されていることが分かります。
第1回 JRECOフロン格付けを終えて
今回の調査にあたり、1350社のホームページから報告書に辿り着き、その報告書で「フロン排出抑制法」の遵守状況をどの程度記載されているかを調べました。
最近では、従来のCSRのレポートから、「統合報告書」にかわり、財務報告とともに記載する傾向にあります。企業によってはその呼称はサステナビリティ報告書、レスポンシブルレポート、環境報告書、ESG報告書などさまざまです。
特に、日本を代表する有名企業の報告書は項目も多岐にわたり、数十ページにもなる構成やデザインも多彩で、人的資源・コストを投資していることが推察できます。
1350社の報告書を調査した結果、全体の52%にあたる703社は環境関連の記載がありました。残りの48%にあたる647社は環境関連の報告が全くない、あるいは数値的な報告がされていませんでした(図1)。特に、会社規模が大きくても、IT関連企業、金融、サービス、不動産、放送局などは環境関係の報告が乏しい傾向です(表1)。
さらに、製造業と非製造業で同様の比較をしたものを図2、3に示します。製造業では「報告あり」が70%の497社に対して、報告がないものが30%の216社でした。一方、非製造業ではその逆の傾向にあり、「報告あり」が32%の206社に対し、報告がないものが431社でした。
上記の703社の報告書を調査し「フロン排出抑制法」遵守状況について評価した内容を表2に示します。この表2は業種別の企業数と遵守状況をランク分けしたものです。
そして、表2をグラフ化してものが図4です。全体の84%にあたる592社が「フロン排出抑制法」遵守についての記載がありませんでした。さらに、過去の特定フロンについて言及をされているもので「フロン排出抑制法」を正確に理解されていないと思われる企業、自社機器からのフロンの漏えいを抑制する目的である「フロン排出抑制法」遵守ではなく、廃棄自動車、建築物解体での冷凍空調機器などから「業」として回収したフロン類のみを記載している企業もありました。詳細は表2をご覧下さい。
化学製造業はAランクが9社、Bランクが8社、食品製造ではAランクが1社、Bランクが4社、商業でAランクが3社、Bランクが1社となっています(表2)。食品製造業、化学製造業、商業(一部)では冷凍空調機器の使用(電気、整備費)は経営的な課題も大きく経営者の関心が高くなっている一因であるのかもしれません。
フロン排出抑制法遵守状況(A、B、C)ランクの企業は703社中では12.4%の87社でした。
(以下、下記のランクで評価)
- A:算定漏えい量、定期・簡易点検状況など適切に記載:16社
- B:法遵守の記載内容に一部不足がある:37社
- C:「フロン排出抑制法」を遵守している旨だけ記載:34社
- E:フロンの記載はあるが特定フロンであったり、 「フロン排出抑制法」を正確に理解されていないと思われます:24社
- F:「フロン排出抑制法」記載全くなし、あるいは法の理解度なし:592社
- J:建設解体現場、製品回収などのフロン回収実績(自動車メーカなどは自社の「フロン排出抑制法」遵守状況報告ではなく、回収自動車などから のフロン回収のみを記載する傾向が高い):19社
- T:特定フロンの記載のみ、あるいは「フロン排出抑制法」を理解していない:58社
- M:2017年度の調査では詳細な報告があったが、今回は報告がなくなった:19社
いずれにしても、これらA、Bランク企業の経営者はフロン類の漏えい防止対策に関心が高く「フロン排出抑制法」遵守に向けてトップダウンによる指示をされていると思われます。経営者のトップダウン指示は、従業員に「フロン排出抑制法」を遵守してもらうために不可欠です。
A、Bランク企業がまだ少ない理由は、一般の方たちが不可欠なインフラである冷凍空調機器の存在に気付かないことであり、殆どの人たちがフロン類について感心がないことです。それに気付く企業経営者が増えることこそが、この重要なインフラへのサステナビリティを高めることではないでしょうか。次回の格付けではA、Bランク企業がさらに増えることを期待し、JRECOとしては一層の啓発活動を行う所存です。
ところで、現在使っている代替フロンは2036年には生産が殆どできなくなります。機器を使い続けるためには「フロン排出抑制法」遵守してフロン類を大切に使わなくてはなりません。それができないと、まだ使える機器を廃棄して新規に機器を、買い換えなければならなくなることを認識ください。冷凍空調インフラにとってまさに「存亡の危機」です。